Не приходи́л ли сюда́ вот э́тот челове́к?
発音ニ プリハヂール リ スュダー ヴォト エータト チェラヴェーク?
- 直訳
- この人がここへ来ませんでしたか?
- 原作訳
- この男が来ませんでしたか?
- 試訳
- この人がここへ来ませんでしたか?
文法・読解メモ
ли は、疑問を作る助詞です。
この文では、「ここへ来たかどうか」という疑問の焦点を担う述語部分 не приходи́л を文頭に置き、その直後に ли を置いています。
現代ロシア語の日常的な会話であれば、Вот э́тот челове́к не приходи́л сюда́? のように、イントネーションだけで疑問を表すこともできます。
それに対して、ли を用いた疑問文には、やや文語的で改まった響きがあります。
また、単に「来ましたか?」と直接尋ねるのではなく、не ... ли を用いて「ひょっとして来ませんでしたか」と尋ねることで、問いかけの直接性を弱めた、控えめで丁寧な言い方になっています。
この表現が明治時代に特有のものとはいえませんが、こうした文体は、作品の時代的な雰囲気や、月島の慎重で改まった話し方にもなじむように感じられます。
приходи́л は、不完了体 приходи́ть の過去・男性単数形です。一度の来訪について使われる場合、「来て、その後立ち去った」という往復を含む出来事を表し、本人は現在その場所にいないことが通常含意されます。
これに対して、完了体の過去形 пришёл は、目的地に到着したという結果に焦点を置きます。その後に立ち去ったという情報がなければ、本人が到着後もその場所にいると受け取られることが多くなります。
例えば、Он приходи́л. は、通常「彼は来たが、今はもう帰った」という意味になります。
一方、Он пришёл. は、「彼が到着した」という結果を表し、特にほかの説明がなければ、現在もそこにいると受け取られることが多い表現です。
この場面では、月島は、探している人物が以前ここへ来たか、ここへ立ち寄ったかを尋ねています。そのため、приходи́л が使われています。
челове́к は性別を問わず「人」を指しますが、ここではキロランケの写真を見せながら尋ねているため、文脈に応じて「この男」と訳すこともできます。